粗筋
深夜ラジオのDJハイジは今日もご機嫌に放送中。
ちょっといい仲のひげもじゃとアイコンタクトを取りつつ
ケン・フォーりーの甘すぎるボイスで番組は最高潮!
デスメタル系の人が鼻息荒く「俺は全能の山羊だ!」とか言ってたけど
「豚じゃダメなの~♪」とか返しつつ、いつも通りに放送終了。
いぇ~い、今日はあがり~と放送室を出ると、受付に
自分あての木の箱が届いてるじゃあ~りませんか。
あらやだ、中身は?ってんで開けてみますってーと…
評価:あまりに妙なバランスの映画。
俺はかなり好き
ロブ・ゾンビの映画、と聞くと
恐らく皆が思い浮かべるイメージは、
実はバラバラなんじゃないかなと思う。
ともかくこの監督は、
丁寧。無茶苦茶やってるのによく観ると
すげえ丁寧に撮ってるし、脚本を考え抜いている。
お客に何が起こっているかを伝えようとしている。
ただし、起こっていることを
きっちり説明して理解させる気はない。
見やすいデビット・リンチといったところだろうか?
長編映画第五作目で、なおかつ自分が脚本を書くオリジナル企画とあってか
今回はそれが大爆発している。
主筋は
魔女の復讐譚。
これがCGなどほとんど使わないクラシカルな、言っちまえば
Jホラー的な演出で、じわじわと生贄に選ばれた主人公が狂っていく様を描く…
んだが、これがど~見ても、
薬物中毒から抜け出せない人間のメタファーにもなってるのよ
主人公ハイジは明言はされないけど、完全に薬物にはまっていた過去もちで
それをどうやらケン・フォーリーは快く思っていない。
大体、魔女の罠に落ちていくのも
「好奇心」からドアを潜ったのが始まりであって、それ以降ズルズルと引き込まれていくという、どっからどうみても
ダメ絶対な状態で
途中から魔女が薬の売人に見えてくるんだが
ハイジが最後の一線を越えるのも、自主的に逃避の為に麻薬を買ったのが原因なんだよね。
ここで、友人以上になりたがっている彼に
頼れない、っていうのは
魔女が言った宿命ってよりは、
薬物から立ち直っているように
見せかけるのに精一杯の人間の
くだらないプライドの所為に見えるんだわ
で、まあ、色々頑張ってみたけど、結局彼の手を振りほどいて
「自分から扉を閉めて」
「キツイ一発を決めて」
「スゲエ幻覚でグチャグチャになって」
「どっかに行っちゃって終わり」というね……
ゾンビ版レクイエム・フォー・ドリーム(ただしドリーム抜き)という感じ
これが強すぎて、オカルト面とそりが合わなくなっているように思えるんだよね
本来なら、そう、ダリオ・アルジェントあたりなら
間抜けなゴア描写とかで
こっちを丸め込んでくれるんだけど、ゾンビの演出はあくまでも脚本に忠実
ともかくラストまでは地味に地味に、堅実に行く。
例えばこういう映画で普通の監督が撮ったなら
間違いなくハイジの犬は死ぬ。
また、ラストで反キリストが生まれたなら、それに対するリアクションを入れる
ところがこの映画はそういうのは無い。
魔女たちの信仰は仰々しく描写されるんだけど、ちゃんと筋が通っていて
キリスト以外の神が生まれたからといって、世がどうなるわけでもない。
ここら辺、日本人だと「
まあ、そりゃそうだよな」と変に納得してしまう。
恐らく、ハイジのかけたレコードで覚醒した三人の魔女も、あくまでも
関わってきた人間しか殺傷しない。
ラストの大量殺人も、無差別ではなく
呪いの成就という形で
あくまでもルールどおりなのだ
ゾンビ監督にしてはゴア描写が少ない、という人たちの気持ちもわかるけど
(
いや、元々この人は少ないんだけどね)
ゾンビ作品はいつもキャラがぶれない。今作もその通り。
それ故に、がっちりした二つの話が、微妙に融合しきれず
どっちつかずの印象をもってしまったというわけです。
もうちっとどっちかに寄ってれば
センチネルみたいな傑作になってたんじゃねーかな
とはいえ、それを補ってあまりあるビジュアルと音楽!
いつでも曇天なセイラムの空!
真昼間に通りの向こうから無貌の男が山羊を連れてくる!
脳汁が出るショット!
薄暗い部屋で赤い十字架に手を翳す
ハイジを見つめるけだもの!
死体の山の上にマリアのように立つハイジ!
余談ですが、某賞へ出して落選した小説にまったく同じシーンを書いておりまして、ああ、これは!と滅茶苦茶吃驚したw
そして、あの、
脳が引き攣るような素晴らしい魔女の音色!
うおおおおおお、最高!
キャストは上記通り
好きものが喜ぶキャストばかりってのもニヤニヤしっぱなし。
調べたらメグ・フォスターは1979年の緋文字の映画に出てるのね。
ホーソン繋がりかw
個人的に映画と全く関係なく最高だったのが、
ケン・フォーリーの声ね
さいこおおおおおおおお!
ゾンビの嫁さんは、今までも「結構演技ができる人なんだ」って感じだったが
今作は
ともかく凄い。素なのかもしれないけど、割と控えめな陽気さ?
守ってあげたい空気?これがガンガン出てる。
ここら辺、ゾンビの
嫁さん最高ってのが画面から
匂い立ってくるようで微笑ましいww
さて、私、キリスト教関係は人並みかそれ以下の知識しかありません。
ってなもんで、この映画の中の時間が一週間ってのは
「
キリストが死んでから復活云々のあれ」で
「
三人の賢者」が「
三人の魔女」なのかね?
そっちの印象がスゲエ安っぽく作ってる辺り、私が昔教会に行った時にに感じた
「
う~ん、これは何というか、神様の宣伝所にみえるなあ」と通じている、かな?
そういう意味で「ライブのステージ」ってのは教会の説教と一脈通じるのやも
つーわけで万人にはお奨めできないです。
マーダーライドショウよりもお勧めできません。
だが、はまると……
ハマってみる?
このメイクと衣装が結構短くて残念!
1. 無題