モンスターズ1970 2004年 中央公論社
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著:
井上雅彦「デモン・ウォーズ」
田中啓文「糞臭の村」
友成純一「魔物の沼」
菊地秀行「甘い告白」
概要・粗筋
・
1970年代のモンスターものをモチーフにした短編集。
「デモン・ウォーズ」……
どっかで聞いた事のある名前の少女にナニカが憑依した!続発する怪奇現象!
お約束の神父二人が現場に向かうが……
もろエクソシスト!
「糞臭の村」……人生に疲れ果てながらも夢を追い求めるおっさん。彼の夢は日本の考古学史を塗り替える大発見!だが……
文章から臭ってくる!?
「魔物の沼」……
アホな若人三人が、田舎の町の片隅にある禁断の場所に肝試しに入る。勿論のごとく勿論なことになるが、しかし事態はそれで終わらなかった……
モスキートのポスターは最高です
「甘い告白」……トップ屋の主人公は今日も今日とて、テレコは回さないが、不可思議な事件に首を突っ込んでいた。しかし、そこに飛来する巨岩!事態はしっちゃかめっちゃかな様相を呈していく……
もしかしたら一番遊びの多い作品かも
評価:
著者達のファンなら一読をお薦め
以下ちょこちょこネタバレにつき御注意!
拍手コメントのコーナーで「糞臭の村」を教えていただき、その
あまりの内容に興味を持ち、手に入れて読んでみたのだが、ま~…
想像以上に凄まじい出来だったw
とはいえ、ピンとこない話もあるし、テーマとなっている70年代モンスターホラーを感じられたかというと、んん~…なんか、
これって70年代モンスター・ホラー映画のネタをまぶしただけで、皆さん好き勝手に書いてね?(笑
いや、皆さんノリノリなんでいいんすけどね。
では以下、読んだ順に個別に感想を述べていくと致します。
「甘い告白」
菊地秀行氏というと、私はまず
「魔界シネマ館」がパッと出てくる。「妖神グルメ」とか「吸血鬼ハンターD」とか、氏の偉大なる著作の数々よりも、一番最初に読んだ本が「魔界シネマ館」で、氏のイメージは小説家というより
海外のコンペに行ってビデオを命がけで漁ってる人でして
この買い物エッセイに物凄い影響を受けた
そんな氏の小説だけにかなり
変な期待をして読み始めたのだが、それがどうにもいけなかった。
軽妙な語り口で、無茶苦茶な話をさらっと読ませるのは流石なのだけれども、どうにも乗れなかった。70年代の単語を散りばめ、主人公の渾名で最後に落とすのはくだらなくて良いのだけれども、
どうにも軽すぎる。
多分、このアンソロジーで最初に読むべきではなかったのであろう。
順番通りに最後に読んでいれば、口直しというか、焼き肉の後のガムみたいな作用をしたんじゃないだろうか。
「魔物の村」
友成氏の作品ということで、こりゃまたネッシーネタかと身構えて読んだのだが、意外や、
「吸血の群れ・ハードコアバージョン」「ウルトラQ・ハードコアバージョン」といった感じのものであった。
わずかな揺らぎが、とんでもない事態に発展していく後半のパニック描写の
淡泊さが惜しい。ここを書き込んでいくとキングの小説みたく長編になってしまうから、わざとこうしてるのだろうけど、前半の悲惨な前フリで期待していただけに、
ガッカリしてしまった。
また、巨大な蚊の襲撃等は「モスキート」辺りの90年代ホラーの臭いが強すぎる気がする。
容赦なく子供がバンバン死ぬのは嬉しいんだけどねえ
「デモン・ウォーズ」
珍作!
いい意味で珍作!
70年代モンスターホラーつってんのに、
エクソシスト全力バリバリのパロディから始まり、途中から
とんでもない映画が連結される!
なんとそれは
妖怪大戦争!
勿論68年版だwww
ダイモンvs
リーガンに憑依した日本妖怪軍団!
うわ~アホだ~
ABURASUMASHIとか
ROKUROKUBIとか
日本妖怪がローマ字でガンガン書かれる珍妙なドライブ感!
読み辛さすら面白い!
なんかもう、これほど
文章の真剣さと、頭の中に浮かぶビジュアルの間抜けさの溝が深くて広い小説ってのも珍しい。話自体は短編にしたって薄いものだけど、それはわざとで、
徹底して自分の好きな物を書いてますってのが伝わってくるので良し!
なんかわからんが良し!
ぶるぶるまで出るんかい!
「糞臭の村」
田舎を舞台にしたぶっ飛び伝奇ホラー!
いや
田舎を舞台にしたぶっ飛びウンコ伝奇ホラー!!!
UNKO!
お話自体は、そう、ゲームで言えば
アトラス臭が濃厚と言いますか、
ペルソナ4よりも
真・女神転生デビルサマナーですかね。正体不明の古墳の謎を追っていき、封印されたモノと最後に対峙する……
ね?よくある話でしょ?
ところがねえ……その封印されてたモノってのが
MMR系のぶっ飛び理論の奴でして、で、それの下僕が……
フンコロガシなんですよ。
で、まあ、生贄と言いますか、この村で
ババガミ様に捧げられている物が
ウンコなんですね。もう村中に
ウンコの匂いが漂っている中、巨大フンコロガシがガサガサ這い回って、神社の神主が
「お告げじゃ!ウンコが足りん!」とか言っちゃって、
「もうウンコねえよ!」って村民絶叫。仕方なく、
隣町のバキュームカー襲撃!主人公肥溜めに落とされて、色々飲んじゃう!……という、
くっさいくっさいアホな状況を、
真剣に落ち着いたトーンでガッチリ書かれているわけですよ。
飯食いながら絶対読めない凄まじさ!
クライマックスは村中阿鼻叫喚の生き地獄!
まあ、確かに70年代つったら
汲み取り式が多かったんでしょうけど、それとモンスターホラーは関係なくね? という
根本的な疑問がチラチラ頭に浮かぶんだけど、それをぶっ飛ばす後半の惨劇と、
思わず唸る最後の対決。ここで
ホントにどーでもいいと思われた、ある設定が
まさかの決定打になるってのが巧い!
さて、読み終わって振り返ると、テーマ的にまとまっているとは思えないアンソロジーではあるし、どうにも食い足りない。全体的に
長編のネタを無理に短編にしている感じがするのよね。特に「デモン・ウォーズ」はエクソシストのもろパロなだけに、
サクサク進まれると原作映画両方とも好きな身としては、ちょいと辛い。
しかし
「糞臭の村」の、あの強烈な籠った臭いの感覚は唯一無二!
あれでお腹いっぱいにはなれると思う。
つーわけで、ややお薦め!
「糞臭の村」だけは、口に物を入れて読まないでね!
トイレに近づくたびに思い出す
1. 無題
後、日本妖怪と西洋の悪魔との大対戦が印象にのこってるのもありますね。河童の設定が活かせていたのには軽く感心しました。ところで、冒頭の少女があれをかけてお客様が溶けたように見えたのはなんの妖怪の仕業なのかが未だにわからないのが心残りなのですが、わかりますか?
Re:無題