ババドック 暗闇の魔物 原題「Babadooc」2014豪
手羽先さんからリクエストをいただきました!
監督:ジェニファー・ケント
主演:エシー・デイヴィス
共演:ノア・ワイズマン
ヘイリー・マケルヒニー
粗筋
シングルマザーのアメリアは疲れ果てていた。
一人息子のサミュエルの奇行が日々激しくなってきたからだ。
そんなある日、彼女は一冊の本を息子の部屋で見つける……
評価:色々な意味で
凄い作品
以下、色々とネタバレにつき御注意
う~む、何と言ったらいいものか……管理人であるとこの私は、
男性であるというところを踏まえて読んでいただきたいです。
部長はあくまで代理です
大変面白い映画だった。
まずアメリア役のエシー・ディヴィスとサミュエル役のノア・ワイズマンの演技が
半端じゃない。エシー・ディヴィスの
「昔は美人だったが今は倦み疲れている」感が、じわ~っと
「三面記事殺人事件顔」に変貌していく様!
もう眼が怖い!画面が暗く静かなトーンなのに、
この人の目だけが、
フライパンで何かをじりじりと炒っているような、弾けそうな輝きがあるんですわ。
料理中にとっさに火傷する瞬間の図
それに相対するのがノア・ワイズマン。
いや……この子、その、
モノホンなんじゃねーの?と疑うレベルの
「多動性障害」(なのかな?)演技!
心底鬱陶しい!
でも、母親に対する愛情と自分にできる事を精一杯やろうとしているのが、これまた目から滲み出てくるんだ!
いつの間にか応援してしまう、ひたむきさ
この二人、うますぎんだよ!
そんな二人が醸し出す
世界中の親子が
「あー……わかるわこの状況……」という
何処の家庭でもあるんじゃないかという親子のすれ違い
子供が見えない何かと闘おうとする行為が、結果的に母親をしっかりと救う最後の展開も
つまり
児童向けファンタジーホラーを現実の面から見るとこうなんですよと、
さっと表現していて唸らされる。
親の向こうのボンヤリとした悪い存在が子供の敵なんだよね
とはいえ、この映画、女性、特にお子さんを持っていらっしゃる方が見ると感想が全く違うものになるんじゃないかとも思えるんですね。
それくらいこう……独特の、
多分女性にしかわからないナニカが漂っている気がするんですわ。女性が見たら胸をかきむしられるような、何とも言えん感情が出てくるんじゃないだろうか……
つーわけで、非常に癖が強い映画ですが一見の価値はあるかと。
女性の方は、
ひょっとすると猛毒の可能性もあります!
条件付けでお薦めです!
さてラスト周りの解釈はいつものやつで!
さて、この映画のラストを私はどう解釈したのか?ってことですが
まずは地下室の解釈ですかね
あの地下室は、旦那の遺品がある場所なんですね。
で、奥さんと息子では捉え方が違う。
奥さんは、
過去の思い出であり、今の自分の生活(というか正気)を保つためのストッパー
息子にとっては、会った事のない憧れの存在の父親は
未来への起爆剤。
で、この地下室にあった父親の衣装を
息子が壁に縫い付け、それを目にした母親が
ババドックの絵本を描いた。
やがてそれは、心が通い合ってなかった息子と母親の
共同幻想となり
それを通して、二人は本音の衝突をし、お互いに理解しあっていくわけですね。
で、まあ、その過程で地下室の存在っていうのが、二人の中で変化するわけです。
親子二人にとっての、共有する
父親に関係する思い出。
その中には、良いものもあれば今回の映画で語られたような、大変悪いものもある。
ババドックはその象徴であり、それは親子が生きている限り、
共に歩み続けなければならないものでありましょう。
彼女にとって息子は、
引っこ抜いて捨ててしまうじくじくと痛む虫歯のような存在ではなく
最後に細やかなマジックを成功させる、未来への可能性を開花させた愛する息子となったのでしょう。
そんな息子への愛を持ち続け、再び道を踏み外さないために、彼女はババドックを地下室で飼い続ける。ミミズは一見してグロテスクだけど、息子が一生懸命集めた物でありまして、それは時が経つにつれ、息子の成長と共に変わっていくのでしょう。
ババドックはゴキブリのようなものなんでしょう。
誰に家の地下室にも冷蔵庫の裏にもいる。
切っ掛けさえあれば、だれの家にも表れるし
ひょっとすると、結構多くの家の何処かで
内緒で飼われ続けているのだ。
ところで最後のババドックは父親役の人がやってるんですよね?