あらすじ
『私』は患者の『男』に約束を迫られた。
『男』が言うには、机の上にある書類の束は
彼と彼の大叔父が命をかけて集めた物であるという。
「燃やしてくれますね。全部燃やしてくれますよね?」
『男』は私にそう聞いた……
評価:
ラヴクラフトを読んだことのある人なら、一度は観ておくべき!
ラヴクラフトを知っている人なら、
間違いなく読んでいる作品として
「インスマスの影」「クトゥルフの呼び声」を私が挙げても
異を唱える人はいないと思う。
とりわけ「クトゥルフの呼び声」はフォロワーも含めた全作品群の中で
絶対的に中心にある話なんだけども
最強と言っていいほど
物凄く映像化しにくい作品であることは間違いない。
ちなみに「クトルゥフの呼び声」ってのは
大体こんな感じ
という作品であってですね
ぶっちゃけ、
この話を違う角度から語ったり、
分解して詳細に語ると
クトゥルフ神話になるんですよ!
暴論すぎる
そのくらい強烈な作品であるから、
軽い気持ちでは映像できない
しかもクライマックスまでは割と地味な怪奇譚なのに
クライマックスはアホのように規模がデカい、大怪獣ものになってしまう
現代なら編集さんから駄目だし待ったなし!
この最後の大怪獣ってとこがポイントで
例えば、舞台となっている1930年代を再現しても
最後の最後にそうなってしまうと、
一体誰向けなのか判然としないことに
なっちまうんですな。
ここで
ラヴクラフト物って、一体誰向けなんだ?って問題も出てくるわけです
いわゆる、軽~いノリのホラー大好きって人からは
めんどくさそうに見られ
一般人からは
ホラーと見られ
勿論
子供向きでもない
スプラッター描写があるわけでもなく、
強烈な心理描写があるわけでもない
つまり最初っからファン向けなわけであり
しかも
聖典と言って差支えが無い「クトゥルフの呼び声」であるわけで
雰囲気を再現した上で、
クライマックス自体もちゃんとやらないと
「クトゥルフの呼び声」にならないんですな
結論として
作ること自体が自殺行為
つまらなければ黙殺
酷ければ非難の嵐
しかも製作費だけはかなりかかる、という
素人がちょっと考えただけでも
相当にアレな企画なわけだ!!
ところが!
この人たちは違った!
HPLHS MOTION PICTURESという大変そそる名の製作軍団は
原作にあった映像化にする際の問題点を
・原作を忠実に再現する為に時代感を出す
↓
・白黒映画として、多分1920年代の無声映画風に撮った
映画と映画の間に台詞が入る形式
・遺書と思われる、独白形式の原作
↓
・精神病院にて告白
マウスオブマッドネス状態
・主人公が主体的に事件に巻き込まれない
↓
・スケッチ形式で主人公を変えていく
個人的には第二部の警部ですね
・後半の邪神大暴れ
↓
・まさかのコマ撮りアニメ
おお……この無駄のない、余計な事をしていない造形…
という、
一つの問題点に対する解決策が、
他の問題点に対する解決策の強化に繋がっているという、
大変素晴らしい方式を編み出したのだ!
勿論低予算映画ではあるし、画もかなり安っぽいんだけど
それが
無声映画+白黒で
「独特の味」に変わる素晴らしさ!
効果音すらないのが、
逆に
ラヴクラフト物としてリアルに働く素晴らしさ!
要は自分の脳内で保管するわけです
何処となく舞台劇を思わせる画面作りが、
クトゥルフが出現した瞬間から
ちゃんとアクション映画に変わる絶妙さ!
イメージバッチリのヨハンセンがクトゥルフに突っ込むときの
スロットルギャン!
ヨハンセンアァァァァァップ!
絶叫し続けるブライドゥン!!
この流れ!!
原作にあった
『電光のような素早さで甲板上を駆け抜けると
舵輪をいきなり逆回転させた』ではないのだけども
原作のこの部分で大興奮したものとしても
満点をあげたい流れだと思います!
特に、「これどうすんの?」と思っていた
「石に入っちゃう描写」
鋭角が急に鈍角に変わる描写があるんだけど
あれは原作と全然違うけど、かなり
巧い事やってると思う
おっ!って吃驚する
そして何より素晴らしいのは
時間が47分なのよ
無駄な事一切なし!
なのにエンディングは
原作より半歩だけ進むのだ!
勿論こうではない
これも前述の解決策、独白形式のお陰であり
世界が全く違った目で見えるように
なってしまった医者=観客という
満点なオチなのですね
勿論、問題点はある
日本語版が出てないのだ!
しかし、字幕に日本語は入っていないけど、ちょい英語力があって
なにより原作を読んでいれば
多分理解できるんじゃねーかな?
ここで無声映画が効いてくるんだよな
つーわけで
リージョンフリーのプレイヤーを持ってる人は
通販で買ってみてもよろしいんじゃないかしら!
条件ありで必見!!