蔭洲升を覆う影 THE SHADOW OVER INNSMAOUTH 1992年 日本
原作:フィリップ・H・ラヴクラフト
「インスマスの影」
演出:那須田淳
脚本:小中千昭
主演:佐野史郎
共演:石橋蓮司
真行寺君江
河合美智子
斉藤洋介
六平直政
烏賊、ネタバレにつきイァ!フタグン!
佐野史郎演じるフリーカメラマン平田は、
斉藤洋介演じる編集長がとりしきる
旅雑誌の会社に就職した。
その席で話題が出た孤高の天才写真家、富宮井衛門。
彼の写真集を調べるうちに平田は
蔭洲升という村の名前を知る。
何か魅かれるものを感じた平田は、編集長に「ひなびた漁村」の特集はどうか
と持ちかけた。
赤牟に到着した平田はバスに乗る
世界一見たいけど見たらおしまいな看板
するとそこには浴衣を着た、何処かで見覚えのある
真行寺君江演じる
女性がいた。
六平直政演じるバス運転手に料金を払おうとするが、釣りはないと言われる。
運転手の腕には鱗のようなものがついていた。
金を崩そうと下車すると、バスは急発進。
途方に暮れる平田。
ベンチに座っていた老人に次のバスはいつかと聞くと
今日はもうないという答え。
毒づく平田に老人は質問を始めた。
「あんた、なんだね?」
「何処から来たのかね?」
「何してるんかね?」
「なんで蔭洲升なんかに行くんかね?」
「あんたのおふくろさんは幾つになったんだ?」
平田の母は入院していた。彼は時々、病院に電話をかけ209号室の
母親の様子をチェックしていた。
突然の妙な質問に当惑する平田。
その時、クラクションが鳴らされた
「ねえ、蔭洲升に乗せてってやろうか?往復、……これで行くけど?」
高いような安いような
ふと気づくと
今まで話していた老人は消えていた。
ベンチに沁みを残して……
絶妙に汚い
評価:
ラヴクラフト物では個人的にこれに勝るものは今の所無し
日本でラブクラフト物!?
しかもインスマスの影!!??
いやいやいやいやこれが、隠れた名作なんですよ!
ちなみにインスマスの影ってのは…
大体こんな感じのお話です
まったくもって地上波放送が似合わない作品なんですな
ところが
佐野史郎氏に
小中千昭氏という
「ちゃんとわかった人たち」が
ゴジラFWより・この後宝田明を殺しにかかります
オカルト勧平(未見)に続いて企画して
どういうわけか
ガッチリ企画が通ってしまったわけでして
こんな表紙です
詳細は94年発行のラブクラフトシンドロームという本を読もう!
こんな企画ですから勿論
低予算ドラマ
なんだけれども
若狭新一の特殊メイクの素晴らしさ!
これがテレビドラマとは……
絶妙なロケ地!
あー、この入り江ときたら…
佐野史郎の判っている演技!!
そして
小中千昭の予算に見合った原作のアレンジが
奇跡の融合を起しているわけでございます
原作にあった、
どんよりとした湿気溢れる漁村もちゃんと再現されてるんだけど
何より
日中の描写!
ひなびていて時間が止まったかのような
陽炎のような、淡くて消えてしまいそうな不思議な空間!!
原作よりも
滑らかに、ぼんやりと、ふんわりと
異界にいやおうもなく飲まれていくこの感触!
これを
加速させるのが原作にはない、主人公の設定だ。
実の所、
主人公の母親は入院すらしておらず、それでころか
主人公は昔この村で暮らしていたのだ。
今までの主人公の記憶は、
全て村から飛び出した主人公が作り上げた
妄想だったのである!
まー、ラブクラフトっぽいw
今まで信じてきた常識や現実が、薄氷に乗っかっていたゴミでしたてきな展開ww
これを、ともすれば陳腐になるかもしれない設定を
佐野史郎氏がやるともう……
冒頭で見せた一般人の演技と、ラストで見せる諦念の表情の差!
before
after
この
落差こそが
世界が違って見え暗黒に飲まれていくっていうオチが
ラブクラフト物の
キモなわけでして、これができないと
ラブクラフト物、ではなく
ただのモンスター映画になってしまうのですな
また、嬉しい事にこの作品では
朧げに、洋上にてその巨体を見せるダゴンも見せてくれるのである。
多分、世界初
流石はウルトラマンティガで
ガタノゾーアを出した小中さん!
わかってるーっ!
ウルトラマンの最高傑作は誰が何を言おうとこれ!
というわけで、現在、VHSが高額で取引されるのみなわけで
中々見るのは難しいと思うのですが、
機会があったら是非!
以下ラストについて
ともかくこの作品が
原作を完全に凌駕してしまうのは
このオチのせいでもあると思う
世界的にぼんやりとあった
動く写真の怪談を、ラヴクラフト物の最後に持ってきたのは
秀逸としか言いようがない
このオチの時の斉藤洋介氏の表情が最高なんだ!
あー、この作品ってホラーなんだーって
嬉しくなる素晴らしいオチです!
1. 足跡ついでに・・・
ラヴクラフトがお好きな人は余程のこの世界の片隅にしかおらんと思ってましたから嬉しいですよ。
で、インスマスを覆う影も絶賛されているのもニヤニヤしながら拝読。
放映当時はリアルタイムで見てましてよもやテレビでラヴクラフト原作を銘打って作られる物を見られるとは思わず、それだけでも大英断でまあ内容はさておき快挙を喜んで見よう、と思ってたんですよ。見終わってこれは良いんじゃないの?良作なんじゃないかとほくそ笑んでました。
このレビューを読ませていただいて今一度観たいと思い、駄目元でYotubeで漁ってみたらありました(笑 今の感想はインスマスをチョイスしたのは正解だったんじゃないか、ドラマ性重視で特殊メイクも抑えめで後は演出プラスアルファなバランスが上手く作用してました。
テレビドラマな低予算にはもってこいの原作かもしれません。
それと大きい要因は好きな人、作品を愛でてる人が携わったのも大きいですね。
少し前にツイッターで佐野さんにラブクラフトのインスマスは未だにマイベストですとお伝えしたら
、佐野さん自身もいつかまたラブクラフトやりたいよね、今だったらクトゥルフの呼び声とか云々など結構乗り気な感じでした。
海外作品は様々見れる範囲で見てきましたが今ひとつな感じでどうも乗り切れなくて、なかなか映像化が上手くいってる作品は難しいです。
Re:足跡ついでに・・・
お読みいただいてありがとうございます。
ラヴクラフト好きは私の周囲は結構いるんですが、世間一般で見るとまだまだかもしれませんね。
で、佐野さんですが、こちらをご覧ください。
https://goo.gl/KlEzfl
4枚目辺りからなんですが、佐野さんからこの記事への拍手コメントをいただいております。
私もダニッチの怪をなんとか漫画にしたいと考えているんですが、時間が無くて(涙