あらすじ(嘘あり)
音響監督のトビー・ジョーンズは招かれてイタリアっぽい撮影所にやってきた。
だが、「お馬さんの映画」と聞いていた映画は
魔女が女性の大切な部分に火かき棒を突っ込む
ハードなジャーロ映画だった!
悩むトビー!
ぶっちゃけ帰りたい!俺は大自然に素敵な音楽をつける人だ!
だが、押しの強いプロデューサーに正論を言われ
<「プロならちゃんと仕事しろ!」
ジョージ・クルーニーを引き延ばしたような監督にけむに巻かれ
<「おっぱい揉みてえ!」
何だか知らんうちに効果音まで担当させられ
*人が鉈で切られるときの音は西瓜です
ドンドン悩んでいったら、あら不思議
現実がどっかに飛んでった!
評価:
サスペリア大好きって人は、暇な時に見てみよう!
ナマニクさんのブログで記事を拝見して以来
これは気になるとずっと待っていた作品がようやく日本公開、そしてソフト化
地方の人間としましては待ちわびた映画だったわけですが、
まー、期待を裏切らない
素晴らしい作品でした。
とはいえ、これを誰かに勧められるかって聞かれたら
答えはNO!
非常に共感しにくい、そして共感できなければ、多分、まったく意味不明な映画だと思うのです
マウス・オブ・マッドネス音響版と思ってみたら痛い目に合うこと間違いなし
音響を扱う映画だけに、画面を見ながら、映ってない物に思いをはせ、息を飲む映画でして
一番近いのはコーエン兄弟の「
バートン・フィンク」です。
前半から中盤はホラー映画の音響効果の舞台裏を見せつつ、
*ヒロインを襲おうとして失敗したゴブリンのアフレコ。ここ最高!
割と普通な感じで断片的かつ間接的に主人公の性格の弱さやストレスを見せていき
(腐っていく野菜で何故かグリーナウェイ思い出した)
ああ、判りやすくストレスでおかしくなったって方向に行くのかな~、と思ったら
後半突入の電話越しの
「
お前の乗ってきた飛行機は存在しないぞ」
から一気に映画は壮絶な混沌に突入!
映画の中にいた主人公が
上映されている映画の中から出てこようとする主人公を
必死に阻止する
という「変身への恐怖」とか「自分の内面への対峙の拒否」とか
いかようにでも読める展開が目白押し!
押井守が撮った「紅い眼鏡」の後半を更に突き放したような
虚構と現実がグチャグチャになりながら、
でも主人公は仕事をしなけりゃならないから
そのグチャグチャ加減が加速していくという
わかるようでわからない
繋がってるようで繋がってない
いや、繋がってるのかな?
って展開が延々と続くのだ!
心の拠り所の母からの手紙は映画の小道具かもしれないし、
ちょっと打ち解けた女優は辞めちゃって別の女優になって、
彼が多分気に入っている台詞を喋ってる…
ひえーっ!足元が薄くなる感じーっ!!!
そりゃ気も狂うわな!
つーわけで、ぶっちゃけ主人公が疲れて
わけわかんなくなった、を説明なしで表現したでいいと思うんだけど
ちょっとホラーっぽい解釈をするならば
主人公は
女優がかけた呪いに巻き込まれたんじゃねーのかなと
言っちまえば無間地獄。
絶対に完成することのない映画製作
主人公が抜けたがっても、それはプロデューサー曰く
「黙って従え」で、絶対に抜けられず
ラストにぼんやり映されるリールのように、
何度も同じところをぐるぐる回り続け、終わりが近づくと
また巻き戻されて最初からになる…
つまり我々が見ているこの映画自体が
呪いそのもので、主人公は絶対に出ることができない、
というメタ構造なのかなあ、と
そう思ってみると、屋外に出たと思ったらスタジオだったってシーンが
かなり気持ち悪くなってきたりする……
役者に関しましては
なんといってもトビー・ジョーンズ!
ミストのオーリー(勇敢で人の良い店員)から
オリエント急行殺人事件のラチェット!(極悪非道!)
と、容姿こそそんなにいけてないのに、
流石役者!まあ、的確にキャラクターの感情が伝わってくる!
ってかこの人観てるだけで、何か元取った気がしてくるのよ。
今作に関しても、トビー・ジョーンズがぼんやりして、呻いて、静かに怒りをたぎらせるのを
ムホムホしながら見るという、ある意味「
萌え映画」っぽいところもあると
思うのですがどうですかね?
というわけで、ここまで読んで、実はまだ観てない方は
見てみるといいんじゃないでしょうか
明確な答えが無く、延々と代替えが効く世界に閉じ込められる……
あれ?これって俺らの今生きてる世界じゃね?
当たり前の事じゃね?
とちょっと凹む勇気があるのなら……